CEDEC 2009 富野由悠季氏による基調講演「慣れたら死ぬぞ」の概要Part2

「ガンダム30周年記念が今年迎えてしまった。これから30年、どうやって生き延びられるのか、と考えました。そう考えた瞬間に、もうガンダムはとっくの昔に終わっているんだ、というところまで行きました。消耗品の再生産しかやってないようなタイトルになっているのでは、と判定しました。」

判定したところから、あと2?30年、僕はもうじき70ですから10年も生きられたらよいのですが、僕より若い人は30年50年生きなければならないんです。そうした人たちのためのガイドラインを示せられるのだろうか、示さなければいけないと年寄りになったら思うようになりました。しかし、基本的にそんなことができる天才はどこにもいません。いませんから、自分たちでやるしかないんです。その場合、考え方の手順をお示しすることができます。基本的に、原理原則をもって考えることを基本にします。」

「原理原則だけで物事を考えていくと原理主義者に陥ってしまって、次のことを生み出せるような自分とか、私、組織を作ることはできません。ただ、基本は絶えず原理原則に立ち戻って考えて、そして次どうするかを考えるわけです。」

「ゲームを作る、開発する、より良くするにはどうするかを考える時に、ゲームの一番の根本はどこにあるかと考えてください。」

「僕にとってはゲームは悪です。どうしてといったら、日常生活を支えている行為ではないからです。電子ツールを使ったゲームというのは、エコでもなんでもなくて、エネルギーを消耗しているわけだから、1千万人とか1億人とか10億人のオーダーであるハードウェアを売ること自体が悪なんですよ。」

「我々自身にも降りかかっている問題で、ガンダムのプラモをあれだけ売ってエコじゃねえだろうが、って、おっしゃられるとおりなんです。」

「今後これから死ぬまでの4-50年考えなければいけないのは、今行った矛盾を整合性をもって省エネをして、たとえば日常の行為の中で悪ではない、善までは言わないまでも気晴らしにはなるんだよ、というゲームを開発をしなければならないだろうというところに行くと思います。原理原則で考えるというのはそういうことです。」

「何をもってしてプレイヤーは楽しんでくれるのか、何をもってしてプレイヤーはゲームで消費する時間をもったいないと思わなかったのかと考えてほしいのです。そうすると、次の開発するテーマはおのずと見つかるでしょう、という言い方をします。しかし、これは極めてレトリックです。ほどんと思いつきません。思いついていれば、テトリスを越えるゲームはとっくの昔に出ているのだけど、テトリスが出て何十年経つ?」

「ゲームの本質にあるものはそれほど多種類なものではないわけです。その部分をどういう形でプレイヤーに享受させるかという風に考えていかなければならないわけです。」

「アクションゲーム、自分の体を動かしてゲーム的に完結するシステムがあったり、脳を活性化するというのがどこまで真実かしりません。が、ああいうふうな仕様にすることによってで顧客が開発できるだろうという言い方をしています。が、今の僕の使った言葉使いはとても危険なことなのです。顧客を開発する、という言葉は人を楽しめるための行為なのでしょうか。」

「顧客を開発するために、一千万人を突破するために、プレステに勝たなければいけないんだよ、という言い方で全部真実になっているという、我々の生活風言葉使いは危険なのです。」

「昔30年40年前に、テレビを見すぎる日本人を一億総白痴化といった大宅壮一さんという評論家がいらっしゃるんですけど、現在のゲームの拡大の仕方を見ていると地球全部の30億とか40億とかを総白痴化する行為にしかなっていないのではないかという風にまで、僕は思っています。そういうことで、30億の人間の時間を無駄に消費していれば、生産活動がそこで止まっているわけです。生産活動が止まってすむような人類が地球上にあと100億増えたら、地球はどうなる、となったとき、お前ら地球を滅ぼす手助けをしたことになるんだぞ、となります。」

「反発して私が関与しているゲームはそうではない、と言い切れるゲームを作ってほしいんです。」

「目標の高みは徹底的に高い所に置いてください。高いとこにおいておけば、その100分の1達成しても、10年後にはその時代のトップに立てるかもしれないんです。目標値が引くければたかが知れています。」

「現在の電子ゲームの環境というのはデジタル技術に支えられているために、起こっている問題も推測することができる。一番大きなことは、去年の初めごろ、俗にいうCGの開発を始めた第一世代の人たちの中から明らかに出てきた言葉があって、ついにCGも理工学系の仕事からデザイナーの仕事になっちゃったんだよね、というため息混じりの発言を聞くようになった。」

「これまでのCGワークはすごく妙だなと思っていた。CGで絵を描いてもらうと絵が下手になる、絵になっていない。」

「理科系の仕事だったのか。だからこんなにCGの絵が、はっきり言います、つまんなかったんだと。」

以上、抜粋ではありますが、上記のような発言をしつつ、ゲーム業界に携わる、とりわけ若い世代に対して講演を行いました。

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