「任天堂の不作為 ~批判の裏側にある事実~」Part4
「中国進出の理由」

『中国のゲームユーザーが購入した日本製ゲームソフトの九二%は海賊版』(注4)。著作権情報センターが2002年に実施した調査によると、中国の国内に出回っているゲームの92%、つまり殆どが海賊版であるという。それほどまでに海賊版が氾濫する市場に、任天堂は進出を決めた。

山内前社長でさえ『模倣品が氾濫(はんらん)しており商売にならない』(注5)と分析していた中国市場であるが、反対に言えばそれだけゲームが受け入れられている証拠でもあり、潜在的な需要の大きさを示しているとも言える。さらには中国の経済成長率の高さと人口の多さに加え、中国政府による海賊版の取り締まりが強化されつつあることも進出する理由のひとつであろう。

任天堂は中国での販売を本格的に行うために、中国に現地法人「神遊科技公司」を設立、『十月半ばから上海と広東省広州、四川省成都で事業を始める』(注4)という。来年以降は、中国全土に事業を拡大するほか、現地でのゲームソフトの開発事業も開始する計画である。岩田社長は『数年後に日米欧に並ぶ事業の柱に育てたい』(同)と述べており、中国市場へかなりの期待を持っているようだ。

しかしながら、中国市場への進出は当然リスクも伴う。任天堂にとって中国は魅力的な市場であるには違いないが、海賊版が横行する中で同社のソフトが本当にそれらに負けることなく販売でき、期待した収益を挙げられるのか不明である。そのようなリスクがあるにも関わらず、任天堂が中国進出を急ぐのは、考えてみれば当たり前のことである。なぜなら、任天堂の収益は如何に多くの子供を、自社のユーザーとして取り込むかに掛かっているからだ。人口の絶対数が多い中国では、同様に子供の数も多い。しかも、経済的にも好調である。そんな所に他社に先駆けて進出をするのは、飽くなき収益拡大を目指す任天堂にとって、自然の成り行きであると言えるだろう。

任天堂の成功は子供にターゲットを絞り、ゲームを「子供の玩具」として位置づけてきたからこそ、もたらされたものである。しかし、その成功が逆に「子供の玩具ではないゲームはゲームにあらず」という見方を生み、結果として大人のユーザーを取り込むきっかけを逃してしまった、とも言うことができるのだ。過去の成功体験から逃れられなかったために、大人のユーザーを取り込むチャンスを逃したのである。その代償として、オンラインゲームを批判せざるを得なくなり、さらには新たな子供を求めて中国などに進出しなければならなくなったのである。

『オンラインゲームの現時点における問題は、そのビジネスモデルだ。現在のモデルでは、利用者はインターネットプロバイダとゲーム開発会社の両方に料金を支払わなければならない。…私たちは、定期的な支払いの要らない他のビジネスモデルを検討するつもりだ』(注6)。岩田社長は、任天堂がオンラインゲームを運営する場合には現行の方式とは異なるやり方を用いる考えのようだ。だが、それが近い将来に見つかるかどうか分からないし、そもそも月額会員制ではない運営方式でうまく収益を確保できるかどうかも未知数である。手厳しくオンラインゲームを批判してしまった以上、任天堂は素直に月額会員制方式を利用したオンラインゲームを導入することはできない。

近い将来、オンラインゲーム市場は急拡大すると予測されているが、任天堂はその恩恵を十分に与れない可能性がある。自身の不作為による“代償”はかなり高くつくかもしれないのだ。

注4…2003年9月25日 日本経済新聞
注5…2003年2月19日 日経産業新聞
注6…ダイヤモンド「ループ」2003年9月号 P34 ダイヤモンド社

(おわり)

(ライター:菅井)

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