「危機感」
PS2とXboxの通信機能を比べると、現時点では大きな差があると言わざるを得ない。PS2ユーザーが、Xbox並みの機能を手に入れようと思えば、それなりの周辺機器が必要になる。さらには、Xbox向けには人気コンテンツのオンラインゲームが複数出る。それならば、オンラインゲームはXboxで遊ぼうと考えるユーザーがいてもおかしくない。そうなれば、Xboxの存在はPS2の販売台数の伸びを抑えることになる。PS2は驚異的なスピードで普及したとはいえ、PS1の普及台数にはまだまだ届いていない。それだけ、PS2を購入していないPS1ユーザーが数多くいるのだ。SCEの家庭用ゲーム機市場における覇権を維持していくためには、彼らを再びPS2ユーザーとして取りこむ必要がある。しかし、Xboxとの間には通信機能などの面において明確な優劣が存在しているのだ。もし、オンラインゲーム市場が今後の急激な成長を遂げることを見越して、PS2の購入をためらうPS1ユーザーが大量にXboxに流れ始めれば、SCEはオンラインゲーム市場を取られるだけではなく、もしかしたら家庭用ゲーム市場すらも失う可能性もある。
Xboxが家庭用ゲーム市場に負けず劣らずの規模に急成長していくオンラインゲーム市場を牽引するハードになっていけば、Xboxの普及台数はそれに合わせて相当、大きな数になっていくと予想できる。オンラインゲーム市場の成長と同じようにXboxも普及し、仮にPS2と肩を並べるくらいの普及台数になれば、PS2は家庭用ゲーム市場でも厳しい立場に追いこまれるだろう。理由は一つ。PS2がXboxに並ばれた時点で、PS2のXboxに対する唯一の優位がなくなっているためだ。Xboxは最後発なため、PS2よりも性能は高い。しかも、通信機能があり、オンラインゲームがXboxに集まっているのだ。これでは如何にPS2といえども、厳しいと言わざるを得ない。PS2は急成長するオンラインゲーム市場での失敗をきっかけに、Xboxにいつの間にか負ける事態も十分考えられるのだ。
ソニー内部で沸き上がったXbox脅威論は、こうした背景から生まれたものと言えるだろう。更に言えば、PS2を脅かす相手がGCではなくXboxだといっている理由がここから分かる。それはGCがXboxとは異なり、通信機能が標準装備されていないからだ。だから、PS2を脅かす存在とは思われていないのだ。
ソニーが抱いている危機感を如実に物語っているのが、SCEの提携戦略ではないか。2001年12月の間だけでもSCEは、NTT-BB・ヤフーBB・有線ブロードネットワークスなどといった通信各社と提携すると矢継ぎ早に発表した。この目的はすべてはXbox対策のためである。ハードディスクなどの周辺機器をレンタルする方式を導入し『レンタル制で敷居が低い価格設定ができる』(Mainichi
INTERACTIVE ゲームクエスト 「PS2用ソフトをブロードバンド配信 SCE、NTT-BBなど」 2001年12月11日)
と久多良木氏が話していることから考えても一連の動きはXbox対策と判断できる。
さて、SCEのXbox対策は上手く行くのだろうか。久多良木氏はMSや任天堂とのシェア争いには『全く興味がない』(2001年11月26日
日本経済新聞)と語っていたことがあったが、今後はそんなことも言っていられなくなるだろう。Xboxは久多良木氏にとって意外に強敵なのだから。 |