【コラム】「巨星落つ ~遅れた葬礼~」part2
「訪れなかった葬式」

『…だれのせりふでしたか、科学ってやつは葬式ごとに進歩するものなんです。先人を葬り去りつつ進むわけですね』(P2 「クルーグマン教授の経済入門」 著ポール・クルーグマン 訳山形浩生 メディアワークス 1998)。1970年ノーベル経済学賞を受賞した経済学者ポール・サミュエルソンの言葉は意味深長だ。前回“葬式”が必要だと述べたのは、もちろん本当の意味での“葬式”ではない。サミュエルソン的な葬式のことを述べたのである。

アイディア不足に陥り、新たに生み出されるゲームに新鮮味がない。今日のゲーム業界がマンネリとも表現できる状態にあるのは、これまで一度たりとも葬式が行なわれていなかったことに由来するのではないか。サミュエルソンに言わせれば「科学ってやつは葬式ごとに進歩するもの」だが、これは科学だけには当てはまるものではないだろう。その他の分野にも充分言えることだ。なぜなら、偉大な先人が形作ってきた分野をさらに進歩させるためには、常に彼らの業績を否定、あるいは踏襲しつつも大部分を過去のものとして決別を図りながら進んで行かなければならないからだ。先人は偉大だが、それに恐れをなして、先人の業績を神聖なものであり、不可侵のものであると考えてしまうと、彼ら以上の業績を残すことはできない。進歩は、先人を様々な形で葬り去っていかねば、止まってしまうのだ。では、ゲーム業界は先人達を進歩の為に葬り去ってきただろうか。

残念ながらというべきか、喜ぶべきというべきか、ゲーム業界の偉大な先人達はいまだに健在だ。しかも、第一線で活躍している。カプコンの岡本吉起氏は言う。『早く交替しないとダメですよね。宮本茂さんや堀井雄二さんのように、10年前から4番を打っていた人が未だに4番打っているような業界ですよね、ゲーム業界って。…Jリーグだってプロ野球だって、みんな世代交替していくじゃないですか。たまにイチローや松井クラスのスターが出たりしてね。この業界もああいう状況になってほしいですね』(P68 「月刊電撃王 1999年5月号」 メディアワークス)。ゲーム業界の草創期から奮闘していた人が、いまだに現役として、しかも主力として活躍しているのだから、この業界で葬式が行なわれた形跡はない。つまり、葬式ごとに受けられる“進歩の恩恵”に与かれずに、これまできてしまったのだ。何事も進歩がなければ停滞を招く。業界内に漂うマンネリ感の源泉はここにあったのだ。

ただ、「先人達には抜群の能力があるのだから、ゲームを作り続けることに何の不都合があるのか」という批判は当然あるだろう。しかし、能力を持ちつつも、自ら葬式を行なおうとしている先人はいるのだ。アニメ「千と千尋の神隠し」などの監督を務めた巨匠、スタジオジブリの宮崎駿氏である。彼は『これ以上やっては老害』(2001年6月25日 読売新聞夕刊)と語り、自分の存在を葬り去ろうと動きはじめている。一時は引退を口にし、今後の長編映画の制作には難色を示している所からそれは読み取れる。能力のある人が長く留まり続ける事で良い面もあるだろうが、思わぬ弊害を生み出してしまう可能性もある。宮崎氏はそれを「老害」だと表現したのだ。「老害」が、進歩の芽を摘み取ってしまう弊害をもたらす前に、葬式を行なってしまわなければならない。

進歩のためには、葬式は遅れてはいけないものなのだ。

(つづく)

(ライター:菅井)

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