【特集】「人気オリジナル同人ソフト『月姫』製作者に聞く」part8
●「シナリオ・ゲーム構成」担当の奈須きのこさんに聞く

「月姫」に関わった5人の方に一人ずつ質問を送り、その質問に対するご返答を掲載の最終回。

「シナリオ・ゲーム構成」を担当された奈須きのこさんに質問しております。この冬にはTYPE-MOONとしてではなく、個人としても作品を出すので、こちらもチェック。


Q1.ゲーム会社へ勤めていたようですが、どのような会社だったのでしょうか。

A1.いえ、勤めていた訳ではなく、ちょっとしたお手伝いでした。社員という訳でも、アルバイトという訳でもなく、ちょっとした文章を書かさせて頂いただけなのです。「ANGEL VOICE」という同人誌を見てくださった方が、知り合いを通じて声をかけてくださったんです。種別はWINDOWSでした。


Q2.会社にいた時に関わっていた仕事内容と、その時の苦労話などをお聞かせください。

A2.仕事内容は有って無かったようなものでしょうか。苦労話というと、今までワープロで文章を打っていたのがパソコンに変わった、という事ぐらいです。あとは実に楽しかった。連日泊まり込みのお祭りみたいな物で、グラフィッカーさんの方々には本当によくしていただきました。


Q3.会社でやっていたことが「月姫」制作にも生かされたことはあるのでしょうか。

A3.色々なジャンルのゲームがありますから断言はできないのですが、月姫のようなゲームにおいては原画とシナリオの意志疎通は絶対に必要だということです。会社で痛感した事は、ただこの一点のみだと思います。


Q4.人に魅力を感じてもらうための文を書く上で、注意を払っている点やコツなどがあれば。

A4.コツは自分でも解っていないのですが、注意を払っている点は一つほど。自分が好きな文体を、いかに自分以外の主観に受け入れて貰えるか、でしょうか。自己流になればなるほど、教典から離れれば離れるほど、文章は歪な物になってしまいます。それでも自分が信じた文体を通したいのであれば、共通ルールぎりぎりの所まで詰め寄って冒険しよう、というのがかつての自分の心境だったと思います。今は……きっと、その中間という所でしょうか。と言っても、独流で通す以上は正否はつねにつきまとうのですけどね。


Q5.「月姫」制作時で一番忙しかったときのタイムスケジュールはどんな感じでしょうか。

A5.つねに忙しかった気がします(笑)。それでもあえて、というのであれば、2000年三月から五月にかけての、基本シナリオ一気書きでしょうか。月姫本編は一日ごとに区切られていますが、現実の一日のノルマがゲーム内の一日分のシナリオでした。……そんな中、一日分のシナリオまるまる没にして書き直したのがシエルの十一日目でしたね。アレのせいでスケジュールが一日遅れて、あおりを食らったのが弓塚さつきのエピソードです。ホントはですね、さつき戦は秋葉ルートと翡翠ルートでは大幅に変えたかったんですが。


Q6.家庭用ゲームでオススメのゲームがあればオススメ理由と共にお願いします。

A6.家庭用だと、「御神楽少女探偵団」。いいゲームです。タイトルで敬遠している人は損しています。無論、ミステリー好きな貴方のコトですよ。

このゲーム、プレイヤーキャラが女の子三人組なんですが、決してそーゆーゲームではありません。屋台骨がしっかりとしている、むしろミステリー好きも美少女ゲーム好きも楽しめる作品になっているんです。(あ、あと明治好きも!)

推理小説好きな方なら解ると思うのですが、名探偵というのは最後に現れてスラリと事件を解決するのが華なんです。ですから、名探偵は決してプレイヤーであってならない。事件が事件でなくなってしまい、ゲームが成立しなくなってしまいます。

そこでプレイヤーに相応しいのはワトスンのような一般人になるのですが、そんなプレイヤーではユーザーの飛びつきが悪いんです。なにしろ地味な作業をコツコツと繰り返していく物ですから。そこで情報収集という地味な役割を少女にすれば、画面がバッと引き立つ訳です。

活字で楽しむ小説であるのなら、こんな気苦労は必要ありません。けれど画面、絵と音と物語で楽しむゲームである以上、全ての面においてプレイヤーを楽しませなくてはいけない。

本来両立は難しい、ゲームとしての本格推理物。それを一般ユーザーさんにプレイしてみようか、という気にさせてくれるこの作品は素晴らしいと思います。

もちろん、ゲームそのものも面白いです。演出から細かい所までシャレている画面作り、恐ろしくハイクオリティな立ち絵、魅力的なヒロインたち。そして緊張感ありまくりのトリガーシステム。実は自分、このゲームの為にPSを買い直したりしました。

隠れた名作の感がある「御神楽少女探偵団」。制作したヒューマンさんがコンシューマーから撤退してしまったのはとても残念で、無念です。あれほど意欲的なゲームを創り続けてくれたというのに、それと同等のお返しができなかったのですから。

長くなってしまいましたが、個人的趣向で好きなゲームはこのゲームです。志が高い、というのはこういう方達なのだと思います。


Q7.「月姫」を作る上で、参考になったゲームはあるのでしょうか。またあればそのゲームのどんな部分が参考になったのでしょうか。

A7.ヴィジュアルノベルを作ろう、という気持ちにさせてくれたのはPSの『輝く季節へ』。参考になったのは、きっと今まで楽しんできた全ての娯楽だと思います。


Q8.「月姫」を出した後、自身の中で何か変わったことがあればお聞かせください。

A8.……どうでしょう。自分では分かりません。技術的な事はつねに向上していきたいと思いますが、気持ちはいつまでも今のままでいたいと思っていますから。


Q9.TYPE-MOON以外に、「竹箒」のサークルでも活動をしていますが、こちらでの今後の展開やコミケ61での予定などはどうなのでしょうか。

A9.冬は竹箒で、“空の境界”という個人誌を出す予定です。月姫の主人公・志貴の元となった人の話ですが、内容はまったく別物です。吸血鬼の吸の字も出てきません。(笑)月姫に時間をかけ過ぎた事もあり、空の境界は自分の中でとても遠い存在になってしまった感があります。昔、まだ自分だけで生きていた頃の奈須きのこが、出来る限りの事をしよう、と作り上げたモノです。今見直すととにかく不親切なので修正を加えているんですが、かつての自分と向き合うのはなかなかに辛い作業ですね。親書サイズで上下巻で納められたらいいなー、と思っています。

Q10.具体的な冬コミの予定がありましたら、お願いします。

A10.“空の境界”上・下巻とも400頁程度で、1500円を予定しています。スペースは二日目の西館・あ-52b。興味を持たれた方は是非お越しになってください。

(おわり)

<TYPE-MOON>
http://www.typemoon.com/
<竹箒>
http://www.remus.dti.ne.jp/~takeucto/

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